4月21日 中日-ヤクルトでの誤判定について 私見
昨日4/21(日)にナゴヤドームで開催された、中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズの試合中、審判がアウト/セーフの判定を見ずに下すという、レアな事態が発生しました。
これはあくまで素人である私の私見と感想を書いているものであります。
■経緯
5回表ヤクルトの攻撃、1死2塁から、打者上田選手の打球はセカンド後方への飛球となりました。これを二塁手の堂上選手が捕球し、すぐさま二塁上の京田選手へ送球。同時に、二塁走者の雄平選手は二塁へ帰塁しました。
このプレイはいわゆるアピールプレイというもので、送球が早ければ走者はアウト、併殺となり3アウトチェンジとなるシーンです。
二塁塁審は遅れてセーフの判定を行いました。ところが、二塁塁審はこのアピールプレイが行われた瞬間、明らかに一塁方向を見ており、二塁上でのプレイをジャッジできるような体勢ではありませんでした。
このことから、中日の与田監督はすぐさま抗議を行いました。報道によると、この中で審判団から「異議があればリクエストをしてください」と言われ、映像判定が行われることになったとのことです。
しかしこれに対して、ヤクルトの小川監督は「リクエストはプレー後速やかに行われなければならないもので、抗議に出た後のリクエストは受け付けられないはずだ」と抗議しました。
結果としては中日のリクエストが受け付けられ、映像確認後二塁走者がアウトとなり、5回表終了となりました。
試合後、当該審判は「見ていました」とコメントしました。
しかし試合後に中日球団からNPBへ意見書が提出され、その回答は「二塁塁審は当該プレーへの確認が遅れてしまったことをNPBも認める」というもの、つまり見ていなかったことが正式に認められました。
■疑問点
私の疑問点をまとめました。
①二塁審判が行った判定は適切か
②与田監督の行った抗議は正当なものか
③中日側のリクエストは受け付けられるべきものだったのか
④審判団のその後の対応は適切か
それぞれについて、疑問と私なりの結論を書きました。
①二塁審判が行った判定は適切か
二塁塁審は二塁上のプレイを確認できておらず、ジャッジできる状態にはなかったにも関わらず、セーフのコールを行っている。当然見ていないことは適切ではないに決まっているので今回は触れない。あくまでその後の判定として適切かどうかを考える。
二塁上の判定については、見ていないのだから確実なジャッジは不可能である。しかし、審判が全く何の判定もしなければ試合は止まってしまう。この場面、二塁塁審が直後に「セーフ」の判定を下したことは、あの瞬間においては最善の策だったと考える。
この場においては「アウト」か「セーフ」の2つしか選択肢はないのだが、「アウト」をコールすれば3アウトでチェンジとなり、ボールデッドとなる。一方「セーフ」であればインプレイとなり、その後何かプレーが起きた場合に、試合が切れるまでプレイを続けることができる。よく打球がスタンドインしたか、していないかで揉めて、インプレイとジャッジされた時に再開するときの走者の位置でさらに揉めることがある。今回の場合もインプレイ側である「セーフ」の判定として、試合が切れるところまで進めるのが良いのではないか。
②与田監督の行った抗議は正当なものか
手持ちの公認野球規則を読んでみたところ次のような記載があるので引用する。
九・〇二 審判員の裁定
(a)・・・走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから(中略)その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。
これを読むと、与田監督の抗議は許されない様に思われる。但し、同じ条項には次のような記載がある
(b)審判員の裁定が規則の適用を誤って下された疑いがあるときには、監督だけがその裁定を規則に基づく正しい裁定に訂正するように要請することができる。
つまり、タイミングの問題等は抗議できないが、そもそも適用するルールが違っている場合は抗議(正しくはアピール)ができることになる。これをどう解釈するかによって今回の抗議が正当なものかどうかが変わってくると思われる。
公認野球規則の審判員に対する一般指示には下記のような記載がある。
試合進行中はボールから目を離してはならない。
審判はこの規則を守っておらず、アピールアウトを定めた条項(七・一〇(a))に対して誤った規則の適用を行ったと考えれば与田監督の抗議は正当な"アピール"であると考える。
③中日側のリクエストは受け付けられるべきものだったのか
リクエストに関しては手元の公認野球規則(2006年版)には記載がなく、分からないのだが、結局のところ論点は「リクエストは当該プレー後速やかに行う」「抗議の後にリクエストを求めた場合は受け付けない」という前提を今回のケースで適用すべきかどうかであろう。
もし、与田監督の抗議が②で述べたうちの本来認められない抗議(アウトかセーフか)であれば、リクエストは受け付けられなくて然るべきと考える。ただ、ルール上可能なアピールであれば、それを行ったことを根拠にリクエストが認められないのはおかしいと思う。規則上認められていることをしているにもかかわらず、それによって権利を失うというのは、適法行為を禁止しているようなものである。
なので、②の前提が正しければリクエストも受け付けられるべきだった、と考える。
④審判団のその後の対応は適切か
②に書いた与田監督の抗議時、審判団は「我々としてはジャッジを出しているので、異議があればリクエストをしてください」と回答したとのことである。つまり規則の適用は間違っていないと回答したことになる。ここからリクエストへとつながるのだが…。
公認野球規則には次のような記載がある。
九・〇二(c)
審判員が、その裁定に対してアピールを受けた場合は、最終の裁定を下すにあたって、他の審判員の意見を求めることはできる。
審判員に対する一般指示
(略)疑念のあるときは、ちゅうちょせず同僚と協議しなければならない。(後略)
つまり、与田監督からアピールがあった段階で、一旦審判団として協議をきちんと行うべきだったと考えられる。
そもそもアピールは当該審判に対して行われないといけないのに、球審と一塁塁審はそれをシャットアウトし、三塁塁審は二塁塁審を遠ざけていた。これは規則上問題だと考える。
リクエストという制度があるから何でもそれに任せればいいという意見もあるようだが、リクエストには回数制限もあるため、本来今回のように審判員がジャッジできていないような案件に使うのは間違っていると考える。
ちなみに、ヤクルト小川監督の抗議はまさに規則の適用に関することであり、正当なアピールである。
■意見
現状の制度では、今回のようなケースの場合審判団が自主的にビデオ検証することができないという話も聞いた。それはそもそもおかしな話である。抗議の勢いに負けて審判がリクエストではないプレーをビデオ判定してしまうという問題があるからかもしれないが、それはそれこそ「審判の威厳」というやつで毅然と対応すればいい。
審判が見ていない、もしくはポジショニングを間違えて全くの死角に入ってしまったような場合、最終判定を審判主導でビデオに頼るような制度を早急に策定すべきだ。誤審によって試合の結果が変わってしまうのは野球ファンとして悲しいし、何より選手や監督コーチ等は生活が懸かっている。
また、今回は場内に何の説明もないまま進行してしまったことも批判されている。球場に来ている観客はお金を払って見ているわけで、最低限の説明は当然必要であろう。良くわからないけど、監督が怒って出てきて、審判が引っこんで、出てきたら回が終わった。あまりにも失礼な話だ。
■蛇足
本筋とは全く関係ないが、野球には「アピール」という言葉が2つの意味で出てくる。
一つはフライやライナーアウトの時に走者が帰塁する前にベースやタッグを行うというものだ。良くアピールという言葉を使うのは犠飛のタッチアップが早かったケースだが、例えばエンドラン時の内野ライナーなどもアピールプレイである。
もう一つは②で書いたような規則適用を間違えた時の"抗議"である。単純にタイミングの見間違えやストライクボールで審判に突っかかるのはアピールではない。
よく高校野球で「アピールプレイ」があると、高校野球でアピールとはとんでもないみたいなことを言う大バカ野郎が湧くのだが、アピールプレイは前者で説明した正当なプレイである。また、後者のアピールも規則に則った正当なものである。
正直野球のルールは分かりづらい。今回書いたこともあくまで私の推測でしかない。できれば公式の見解を聞きたいのだが、ここまで詳しいことは公開されないだろう。